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195 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:54 ID:Htpy13iQ

 後日談


 某月某日、ネルフ本部より帰宅途中のサード・チルドレンが、日本国・戦略
自衛隊所属の諜報員12名により、電車内で拉致される。
 幸いにも、ネルフ保安課職員(女子学生に偽装)の連絡を受けた職員が
急行し、拉致は未遂で阻止。その場でサードチルドレンを保護。身体的・精神的な
応急処置の後、事件現場付近の研究室分室へ移動。身体チェックでは薬物・傷害ともに
問題なし。直接の上司である作戦部長に報告後、各員、通常任務体勢に移行。

 ・・・・・これが、書面で記録された、「サードチルドレン拉致未遂事件」
一部では、通称「シンちゃん痴女事件」の記録である。
 そして、これは、文字通りの後日談。

「・・・で、どうするの?」
「そんなこと言われても、わっかんないわよぉーう。」
 特務機関ネルフ。その作戦本部内の執務室。二人の美女が、どこか投げやりに
言葉を交換していた。
 モニターから目を離さないまま問いかけた、白衣に金髪姿の知的な女性が
赤城リツコ博士。
 ぶすっとした表情で、ウーロン茶のグラスのストローをくわえたまま答えたのが
気鋭の作戦部長、葛城ミサトである。
「物証が少なすぎるんだもの。シンちゃんはなんか喋りたがらないみたいだし。
諜報部も保安課も、なーんか記録を出し惜しみしてるし。」


196 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:55 ID:Htpy13iQ

 リツコが、ちらりと視線をあげて問いかける。
「・・・ガードのチーフの報告と、尋問の終了待ちね。
 それまで、お客さんは何の容疑で拘留してるの?」
「しまらない話だけど、形としては同行を求められただけだから、脅迫容疑
も、傷害も適用できないって。時間が短すぎて、逮捕及び監禁罪も駄目。」
 ウーロン茶は既に飲み終えてしまったので、ストローを宙に向けて、すひーと
吹いて見せながら、ミサトがぶつぶつと答える。
「・・・それじゃあ、拘留できないんじゃ・・・」
「うーん・・・でも、保安部は、強制わいせつと、青少年育成保護条例違反、
だって・・・・」
「・・・え?」
 親友の唖然とした表情に、ミサトは、もう一度ストローをすひーと吹いて見せた。
「まあ、実態としては拉致されかかったわけだから、戦略自衛隊にはでっかい貸し
になるけど。シンちゃん、何されちゃったのかしら・・・・」
「・・・・・」
「ともかく、戦自からの圧力もあって、その容疑だと、そんなに長いことは拘留
しておけないから、各種記録を取って、一日の拘留と厳重注意で釈放だって。」
「もうすぐ記録が上がるから、それできたら、保安部の報告聞いて、そのあとで
ようやくこっちに回って来るってさ。」
 ミサトは、作戦部長、兼チルドレンの保護者として、本部待機状態と言うことだった。
通常の勤務時間が全て終わっているのに、本部に詰めてなければいけないのが
不満のようで、それからもずっとふてくされていた。


197 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:55 ID:Htpy13iQ


「・・・碇指令も、副指令も、不在だものね。」
「あーあ、早く帰って、シンちゃんの晩ご飯食べたいなあ・・・・」
 机に突っ伏してのんきな願望を口にしたとたん、ほぼ同時に二つの報告が執務室に
舞い込んできた。
 一つは、保安部と諜報部の報告の準備が整ったこと。
 もう一つは、戦自の諜報員12名の釈放が決定したので、その手続きの依頼であった。
「チルドレンの身体情報の報告もありますので、赤城リツコ博士、お願いいたします。」
「わかったわ。」
 リツコが、パソコンをシャットダウンして立ち上がる。同時に立ち上がったミサトが、
「至急」「重要」の判の押してあるファイルを受け取って頭をかく。
 戦自が、よほど拘留中の諜報員の釈放を急いでいるらしい。
「ごめーん、リツコ。なんか、こっちのほうが急ぎみたい。報告は改めて聞くから、
とりあえず、報告とかはあんただけ聞いてもらえる?」
「いいわよ。人手不足は辛いわね・・・・」
 もともと、司令と副司令が不在な以上、ナンバー3.4である彼女たちは職務を
分担して行わなければいけない。
 職員に促されて、ミサトは足早に部屋を出て行く。ドアの開閉する、ため息のような音
を背に、リツコも、残ったコーヒーを飲み干して立ち上がった。
「報告、ねえ・・・・」


198 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:55 ID:Htpy13iQ


 通常は、司令と副司令が詰めているはずの執務室。意図的に押さえた照明と、わずかに
冷たく感じる空気は、訪問者の威圧を意図したものだろうか。
 冷たい空気に同調するように表情を引き締めた、長身の女性ガードが、机の前でぴしり
と敬礼した。
「保安二課所属、パイロット保護観察任務、最上タカネ三尉、出頭いたしました。」
「ご苦労様。」
 声をかけてから、赤城リツコ博士は・・・一応、今は司令代行の、さらに代理という
ことになっている・・・額に指を当てて、大きくため息をついた。
「報告書は一応読んだけど。」
「はっ。」
「えーと・・・」
「は。」
「何から聞いて良いのか・・・・」
「・・・・」
 少し考えた後に、リツコ博士はようやく、言葉を続けた。
「・・・冗談、じゃないわよね。」
「客観的な事実を述べたつもりですが。」
 そこで、お互いの間にすらに、沈黙が流れる。
「・・・・学生に偽装した戦自の諜報員一個小隊が、サード・チルドレン拉致を試みた。
ここまでは良いわね?」
「はい。間違いありません。」
「・・・・・」
「・・・・・」


199 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:56 ID:Htpy13iQ


 さらにリツコが、提出された報告書を読み上げていく。
「サキと名乗る、敵小隊の責任者らしい諜報員が、突発的に、サード・チルドレンへの
性的衝動におそわれたと思われる・・・」
「事実です。」
 少し眉の辺りが引きつるのを自覚しながら、リツコはさらに報告書を読み上げた。
「さらに、周囲の諜報員もそれに同調。任務を一時放棄し、サードチルドレンとの、
性的交渉を試みる・・・」
「間違いありません。」
 はぁ・・・と、今度ははっきり声に出してため息をつくリツコ。
「・・・・この報告書を、全部信用しろ、っていうの?」
「読み返してみると、我ながら嫌がらせのようですが。事実のみを記載しました。」
 リツコは、目の前の長身の女性ガードを見据えた。相手は、直立不動の体勢で、
無遠慮ではない程度にこちらに静かな視線を向けている。その、淡い色のサングラス
ごしの視線は、直接、チルドレンのガード任務に当たる人員という、最難関の選抜審査
をトップでクリアした、本部内でも有名な腕利きにふさわしいものだ。
(・・・・突然、気が狂ったわけじゃないみたいだけど・・・・)
「追記。戦自の諜報員達は、サードチルドレンの熱烈な信奉者であったことが、事件の
一因と推察される・・・・」
「裏付けも取れました。添付資料をごらんになって下さい。」
 示された資料には、潜入した諜報員による、戦自内部の「碇シンジ・非公式ファンクラブ」
の会員数・年間増員パーセンテージ・写真等のグッズの売上高等の細密なデータがあった。
 次のページには、同様に、ネルフ内部のファンクラブのデータも追加されていた。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 また数秒、無言でにらみ合う二人。


200 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:56 ID:Htpy13iQ


「本気みたいね・・・」
 今度のため息は、あきらめのものか。
 何気なく、ぱらぱらとファイルをめくってみると、ふっと視線が一点で止まった。
シンジ少年の笑顔、の写真である。
 が、ただの写真ではない。一体誰がどんな状況で撮影したものか、A4サイズいっぱいに
引き延ばされたその写真の中では、シンジが、少し恥ずかしそうに、それでも、
背景まで輝いて見えるような明るさで、朗らかに微笑んでいた。この年代の少年、
しかも「美少年」だけにしか許されないような、切なくなるような微笑である。
「・・・コホン」
「っ!」
 ふと気がつくと、その写真を見つめたまま、かなりの時間が経過してしまっていたらしい。
ガード・最上タカネの咳払いで、リツコは我に返った。
(わ・・・私は、幼年男子趣味はないわよ・・・)
 要するに、その属性の無い人も見ほれるほどのものだということだろう。
「・・・・ファンクラブの会員にだけ配られる、入会特典なのだそうです。」
「どちらの組織のものかしら・・・」
 ネルフ内だったら、自分も入ってしまったかもしれないと思うリツコに、写真の
隅を示すタカネ。(協力・戦略自衛隊記録課)の文字があった。
 戦争記録用の設備で撮影していたのは、敵性組織のパイロットだった。まあ言い訳としては
十分すぎるが・・・・
「これで、ご理解いただけたでしょうか。」
「・・・言いたいことはわかったわ。
 それでも、特殊訓練を受けた軍務経験者が、任務を・・・・」
 

201 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:57 ID:Htpy13iQ



 無言のまま、軽く手のひらをあげて、リツコの発言をさえぎるタカネ。
「?」
「拘束した戦自の部隊員からの記録映像です。音声はありませんが・・・」
 内ポケットから出した、プラスティックケースに収まったディスクを差し出すタカネ。
リツコは、いぶかしげに受け取ると、机のパネルを叩いてスクリーンを表示させ、
ディスクの形式を確認して、ドライブに差し込んだ。
「っ!!!!」
 リツコが、無言の驚愕に身を震わせる。
 表示された画面の中では、シンジが、戦自の諜報員達にそのしなやかな身体を
まさぐられ、弄ばれていた。
 いくつかのカメラで同時に取っていたのだろうか、カットが次々にかわっていく。
シンジの身体を這う白い手、複数の少女に蹂躙される、少年とは思えないペニス。
そして、必死に抵抗しながら、だんだんと快感に浸食され、焦点の合わなくなっていく
シンジの表情。一種、倒錯的な美しさに、リツコは、我を忘れて画面に見入ってしまっていた。
「彼女らは、その場にいて、その行為に実際に参加していたのです。
 ・・・・理性を失っても、何一つ不思議はないと断言します。」
 はぁあああああ・・・と、リツコが何度目か、大きくため息をついた。
「・・・理解、したわ。貴方の報告に、問題点はなかったわね。」
「恐縮です。」
「でも、この映像その他を一緒に見せて納得させるわけにはいかないわね。
 彼女らの(失敗)の理由を、碇司令や冬月副司令が納得できる範囲で、2.3
追加して。」
「了解いたしました。」
 そこで、再生状況をしめすロールバーを見て、ちょっと首をかしげるリツコ。
「あら?ここで、終わりじゃ・・・・」
「あ!そ、その・・・・」


202 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:58 ID:Htpy13iQ



画面の中では、戦自隊員、サキ達が運び出されて行く。が、ロールバーは、全体の映像の
半分しか時間が過ぎていないことを表示している。
 そこで、最上タカネが、初めて、動揺をあらわにしながら言葉を続けた。
「ほ、報告書には・・・記載しておりませんでしたが・・・・
 私の行動に、重大な越権行為がありました。その、進退伺いも、あわせてご報告
したいとおもいます・・・」
 頬は上気し、言葉は、弾む呼吸で何度もとぎれた。
 リツコは、一言も言葉に出せず、画面の中に見入っていた。
 その中で、細身の身体の美少年は、女性ガード達に、先ほどの少女達に倍する
甘美な責めにあって、その身体をあえぎながらくねらせていた。
「サードチルドレンの、性的興奮状態を沈静化されることが、迅速な撤収に不可欠と
思えたのです。サードチルドレンも、異議はないようでしたし・・・・」
 音声がないのでわからないが、シンジ少年は、何度か否定の言葉を発している。が、
後半部分では、既に理性も焼き切れて、快感を求めて相手にしがみついているので
そうは見えない。どちらを責めることもできないことではあるが・・・
 画面の中で、シンジが、最初の絶頂を迎えた。シンジの切迫した表情が、ゆっくりと弛緩し、
全身から力が抜けて崩れ落ちていく情景に、リツコは背筋に妙な刺激を覚えて思わず
震えた。
「えっ・・・・!?」
 そして、次の瞬間、思わずモニターを、両手でつかんでしまった。
 力を失わない、いきりたったシンジのペニス。さらにくわえられる愛撫。シンジの、
切ない表情での「要求」。そして、ズボンを脱ぎ捨てるタカネ。
「・・・私は・・・私も、任務を、忘れてしまいました・・・・
 そして、守るべき、パイロットを・・・サード、チルドレン、を・・・」
 モニターの中では、周囲の制止も耳に入らず、完全に性交状態に入ってしまった
美女と少年が、激しくお互いを求めあっていた。
 

203 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:58 ID:Htpy13iQ



細身の身体が折れるのではないかと心配になるほどの激しさで、肉食獣のように
相手を突き上げるシンジ。そして、理性の焼き切れた、とろけきった表情で
相手にからみつくタカネ。
 そして、二人を襲う絶頂・・・・
 リツコが握りしめていたモニターの縁が、不吉な音を立てて軋んだ。
 シンジ少年のペニスが、タカネの性器から引き抜かれる様子までが、しっかりと
撮影されていた。
「・・・後半部分は、敵の記録器機を接収した私の部下の一名が、個人的に記録して
いたものだそうです。」
 モニターが暗転し、ディスクが待機状態に戻ったことを示す表示が浮かぶ。
「・・・処分は、どんな処分でもお受けいたします。」
 呼吸を整えて、最上タカネは、リツコをまっすぐに見つめた。
最悪、銃殺だとしても、その覚悟はできているつもりだった。
 が・・・
「司令代行・・・リツコ博士!」
 その相手は、熱に浮かされたような表情で、表示の消えた画面を見つめ続けていた。
「・・・・あ!ご、ごめんなさい、なんだったっけ?」
 タカネは、少しだけ苦笑すると、先ほどの言葉を繰り返した。
 リツコは、それを聞くと、少し考えて、頷いた。
「わかったわ。それでは、後に正式な命令として下すけど・・・処置を伝えます。」
 さすがに表情を引き締めるタカネ。


204 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:59 ID:Htpy13iQ

10
「最上タカネ三尉は、サードチルドレン拉致を未然にふせいだ功績で、二尉に昇進
を提案しておきます。同時に、サードチルドレンの治療行為に、冷静な処置を怠った
罪で、一階級の降等を申しつけます。」
「・・・・は?」
「以上、明日付けで、正式な辞令が届きます。なお、適任者不在のため、タカネ三尉は、
引き続き現在の任務を継続すること。」
「あの、その・・・」
「復唱。」
 リツコの声に、弾かれるように敬礼をするタカネ。
「復唱いたします!最上タカネ三尉は、辞令を明日付けで受領し、以後、別命あるまで
現在の任務を遂行いたします!」
 その声に、ぽうっと上気した頬のまま、笑ってみせるリツコ。
「どう見たって、不可抗力よ、これは・・・私でも・・・」
「は?」
「いえ、何でもないわ。あと、この事件は、碇司令と副司令には報告しないように。」
「了解いたしました。」
「それに伴って、この記録は私が破棄します。良いわね?
 では、通常の任務に戻って。」
「はっ!」
 実際に、破棄するかどうかはあえて考えないことにした。

205 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:59 ID:Htpy13iQ

11
「あ、そうそう・・・拉致未遂後、貴方の部下が、サードの身体的・精神的な「チェック」
を行ったのよね?」
「はい。」
 実際には、その「チェック」内容も、知っているのは当人達だけなのだが・・・・
「念のために、本部の施設で、マイクロ・ナノ規模のチェックを、私自身が行いたいの。
貴方が、口頭で、サードチルドレンにそのむね、伝えて頂戴。」
「はい!」
 もう一度、嬉しさを隠さないまま、敬礼して去っていくタカネ。
 ドアの閉まる、圧搾空気の音を耳にしながら、リツコは、そっと微笑んだ。
「・・・そう、エヴァの操縦に、支障があってはいけないもの・・・
 身体的にも、精神的にも、チェックは、徹底しないとね・・・・」
 シンジの微笑んでいる写真を、自分のファイルに挟みながら、リツコは続ける。
「・・・人類全体の命運がかかっているんだもの。ちょっとしたことは、目をつぶられる
べきよね。そう、ちょっとしたことぐらい・・・」
 故意に照明を落としてあるこの部屋の薄闇にとけ込むように、もう一度、リツコはそっと
微笑んだ。
 

206 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:59 ID:Htpy13iQ

12
「あー・・・・めんどくさかったぁ・・・・」
 完全にだれきった呻きとともに、年寄りじみた動作で自分の肩を叩く葛城ミサト。
数分前まで、姿勢、視線はもとより、制服も、制帽までも一部の隙もなく整えていた
反動だろうか。
 書類上の処理だけで済むと思ったら、引き渡しの現場にまでつきあわされ、おまけに
今回の事件の処理の行く末まで、いけ好かない戦自のエージェントと話し合う羽目に
なってしまった。
 のろのろとした動作で、携帯電話の表示に目を走らせる。もう、日付は変更されて
しまった。さすがに、彼女の理解ある同居人、シンジも眠ってしまっただろう。
 良く気がつく彼のことだ、自分の分の食事ぐらいは、暖めて食べられるように取って
おいてくれているだろう。急いで帰って、晩酌としゃれこもう・・・・
 ささやかな贅沢を心の糧に、一度、自分の執務室まで戻るミサト。一応、受け取った
書類ぐらいは保管庫に入れておきたい。
(リツコの所に行くのは、朝になってからね・・・問題があったら、言ってくるでしょ・・・)
角を曲がって、自分の執務室前まできたとき、ミサトは少なからず驚いた。
「シンちゃん!?」
「あ・・・ミサトさん。遅くまで、お疲れさまです・・・」
 学生服姿の、細身の少年は、それまで座っていたベンチから立ち上がった。
S-DATと文庫本が何冊か、鞄の側に置いてある。
「どしたの、シンちゃん!?こんな時間まで・・・」
「あの、その・・・いったんは家に帰ったんですけど、急いで、相談したいことがあって」
 そこで、すこし言葉を濁した。ミサトは、ちょっと首をかしげる。視線を少し落として、
はっきり発言しないというこの姿勢は、以前は見慣れたものだったが、このごろは心を開
いてくれたのか、滅多に見なくなった。それだけ、喋りづらいことなのだろうか。


207 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 07:59 ID:Htpy13iQ

13
「えーと・・・それって、今日の・・・・あちゃ、もう昨日ね。拉致未遂のこと?」
「はい・・・」
 ふむ・・・と頬に手を添えてちょっと考える。「報告」は既に受けているし、第一
「事後処理」はたった今済ませてきたところだ。「相談」と言ったからには、上司と
部下ではなく、「友人」なり「家族」として、話があるということだろう。さらに、
「もう一人の同居人」には聞かせたくないような。
(まあ・・・「恋人」とか「愛人」としてだったりして・・・・えへへへ・・・
 さすがにそりゃないわね・・・・)
 一瞬妄想に走りかけたが、ぽんとシンジの頭に手を載せて、執務室のロックを外した。
「わかったわよん。いいでしょ、どーんと相談に乗ってあげる!」
「あの・・・ありがとう・・・ございます・・・・」
 執務室の中は、自宅から想像したほどには散らばっていなかった。ネルフ職員が掃除を
しているのか?強いて言えば、処理済みの書類と未処理の書類が山積していることだけだろう。
 シンジの主婦じみた感想をよそに、ミサトは、そなえつけの冷蔵庫をあけて、中を探っていた。
姿勢と位置の関係で、ミサトのぎりぎりまで短くしてあるタイトミニにつつまれた、たっぷりした
ボリュームのお尻が、シンジのほうに突きだされている。はっきりと下着の線の浮き出たまろやかな
曲線から、シンジは必死に視線をずらす。
「ほいっ。」
 トンとシンジの前に、何本かのよく冷えたUCC缶コーヒーが置かれる。
「ごめんね、おつまみないのよ・・・ん?」
 ちょっと壁に視線を向けていたシンジを見て、一人納得したミサトが、すっ、とシンジの
耳元にささやく。


208 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 08:00 ID:Htpy13iQ

14
「シンちゃんの、すーけーべー。」
「そっ、そんな!!」
 あわてるシンジの背中を、からからと笑いながら叩くミサト。
「冗談冗談。ごめん、気にしないで・・・・よっと。」
 シンジと並んで、椅子に腰掛けながら、缶ビールのプルを引くミサト。ガシュッと言う音
とともにあふれ出す金色の泡を、嬉しげに口で迎えに行く。
(・・・軍施設の中で、いいのかな・・・・?)
 シンジの素朴な疑問をよそに、ニカッ、と笑ったミサトは、遠慮なくシンジに話しかける。
「そんで?シンちゃん、相談ってなに?」
「あの、その・・・・今日の、事件なんですけど・・・・その、途中に・・・・」
 シンジが、自分の考えをまとめながら、つっかえつっかえ話し出す。
 のほほんとした顔で、ビール片手に聞いていたミサトだが、話が進むにつれ、酔いとは別の
要員から、その形のいい耳や頬が、ぽぉっと赤らんでくる。
「僕・・・こんな、こんなことになるなんて、全然思ってなくて・・・」
 30分を過ぎた頃、ミサトは、ビールを補給するついでに、机の上のコンパネのボタンの一つを
素早く押した。カキッ、と言う小さな音が、部屋の全ての扉がロックされたことを伝える。
話に夢中になっていたシンジは、気づかなかったが。
 ビールが半ダース空になり、時計の短針が一回りした頃、ようやく、シンジは、全てを話し
終えて、大きく一つ、ため息をついた。新しい缶コーヒーをあけると、一息に喉に流し込む。
 と、そのとき、顔が、柔らかい、ふわっとしたものに包まれた。
「そう・・・大変だったわね、シンちゃん・・・・」
 ああ、この感触は・・・少し前に一度、そして、別の人には昨日・・・記憶がある。
あれは、ミサト家を飛び出して、戻ってきた後。ミサトは、笑って、抱きしめてくれた。
そして、昨日。あの、背の高い、ガードの女の人にも、抱きしめてもらった。そして、その後に・・
 考えが、危険な方向に行ってしまいそうになって、あわてて我に返るシンジ。


209 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 08:00 ID:Htpy13iQ

15
「ミサトさん・・・・」
 年の離れた姉のような、優しい抱擁に、安心して目を閉じるシンジ。
 だが・・・
「辛かったでしょ、シンちゃん・・・」
 こちらを心配してくれているのは嬉しい。でも、なんで、身体をすりよせてくるんだろう?
 なんで、壁の近くまで、位置が移動しているんだろう?
「ミサト・・・さん?」
 ほんの少し、不安をにじませた呼びかけに、美貌の作戦部長は、優しくほほえんでみせた。
 だが、その、どこか焦点が遠くに向いている表情は、昨日、遭遇しなかったか?
 身体を控えめに撫でる手は、覚えがないか?
「シンちゃん・・・・」
 熱っぽい呼びかけとともに、ミサトは、立てた人差し指で、シンジの唇を塞いだ。
そして、シンジの身体を、もういちど抱きしめ直す。そのだきしめかたは、すでに、
「家族」としてのものではなかった。
「ミサトさん・・・・ミサトさん・・・んんっ!?」
 不安げな呼びかけに、悲鳴が重なる。ミサトの手が、実は、話の途中から膨らみ続けていた、
シンジのズボンのこわばりを、包み込んだのである。
「大丈夫・・・大丈夫・・・・
 そんな、ガツガツした、無理矢理なやり方は、嫌だったでしょ?
 ゆっくり、ゆっくり、試してみましょう・・・・?」
 想像もしなかった状況に、抵抗らしい抵抗も全くできないまま、シンジは、冷たい感触の
床に、そっと押し倒されていた。


210 :あのじ ◆lGlh4qGedo :03/06/05 08:01 ID:Htpy13iQ

16
 まだ、酔っぱらってしまったミサトの、途方もない冗談じゃないか、とあげた視線は、
窮屈そうに服のジッパーを引き下ろす、ミサトの姿を捕らえた。
 おろしたとたん、はじけるように、扇情的な黒い総レースのブラに包まれた、巨大な
バストがあらわになる。
 凍り付いた視線の中で、ミサトの顔が、ゆっくりと近づいてきた。
「ほら・・・目を、閉じて・・・・・」
 無意識に従ってしまった直後、自分の唇が、暖かく濡れた甘いものにふさがれた。
 その瞬間、サードチルドレン・碇シンジ少年は、一切の思考を放棄した。

 そして・・・次に気がついたときは、ミサトの自宅の、自分の部屋のベッドだった。
がばっと身を起こすと、制服のままである。
 自分に何が起こったのか、必死に理解しようとするシンジの耳に、インターホンの呼び出し
音が届いてきた。
 反射的に部屋の外にでて、受話器を取る。
「はい、葛城です。」
 受話器からは、聞き覚えのある、静かな女性の声が流れ出した。
「サードチルドレン・碇シンジ君ですね。昨日は失礼いたしました。
 保安二課所属、パイロット保護観察任務、最上タカネです。赤城リツコ博士からの、
伝言を伝えに参りました・・・・」

 シンジは、何か、冷たいものを感じて、背筋を震わせた。


 後日談・了
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