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636 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/10 15:39 ID:mfL/Y7ui
 朝。部屋に差し込んでくる朝日。小鳥のさえずり。まどろみの中で聞くそれ
は、心地よい。
 シンジは薄目を開けて、枕元の目覚まし時計を見やった。まだ幾分余裕があ
ることに、ささやかな幸福を覚える。
(もうちょっとだけ、寝てよ……)
 暖かく柔らかな毛布の感触を全身で味わう。と、また眠りの中に沈みかけて、
性器が今日はまた一段と硬く勃起していることに気がつく。
(もう、なんで朝ってこうなんだろ。エッチな夢でも見てたのかな。覚えてな
いけど)
 ペニスに熱く、濡れた感覚。まるで舌で舐められているみたいだ。吐息さえ
亀頭に感じる。
(なんて思ってたら、エッチな夢始まっちゃったかな)
 半覚醒の中で、そんなことを思う。
 くちゃくちゃと音さえ聞こえ始め――
「えっ!?」
 そこでようやくシンジは、股間への刺激が現実であることに気づいて飛び起
きた。
 見ると、布団が大きく膨らんでいる。誰かがベットの中に入り込んでいるの
だ。闖入者は、シンジが目覚めたことも知らずにペニスへの愛撫を続けている。
 シンジは、恐る恐る布団をめくった。そこには、
「か、母さん?」

637 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/10 15:39 ID:mfL/Y7ui
 ユイがペニスを口に含んでいた。
「あら、シンジ、おはよう」
 当たり前のように、ユイは笑顔で挨拶してくる。
 驚きと恥ずかしさでどもりながら、シンジは叫んだ。
「な、な、な、なにしてるのさっ!」
「なにって、起こしにきたらシンジ、布団蹴飛ばしちゃってて、それで見たら
おちんちんがパンツからはみ出してるでしょ。あんまり可愛くて、つい、ね」
 のほほんとした顔と声で、母は告げてくる。どういった論理だろう。母は頭
脳は明晰らしいが常識というものが、世間からかなりずれている。そのことは
一緒に暮らし始めて、すぐに分かった。
「い、いいから、出てってよ。目ならもう覚めたから」
 シンジは、いまだにペニスを握っていたユイを、扉の方に押しやった。
「でも、まだ途中よ。苦しくない?」
「いいから、だいじょうぶだから」 
 ユイは扉の間から顔を覗かせ、しつこく聞いてくる。シンジは両手で扉を押
して、どうにか閉めることに成功した。もっとも鍵はないので、離れれば簡単
に開けられてしまうのだが。
「ご飯できてるから、早く降りてらっしゃいね」
「分かったよ」
 扉の向こうから投げ掛けられるユイの声に答えながらシンジは、母の唾液で
濡れたペニスを複雑な思いで見下ろしていた。
645 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/10 16:46 ID:mfL/Y7ui
「遅いわよ!」
 シンジがチャイムの音を聞いて玄関に行くと、腰に手を当てたアスカに一喝
されてしまう。
「まったく、この私がわざわざ迎えにきてやってるってのに、待たせるなんて
どういうつもりよ」
「ご、ごめん」
 シンジは、素直に謝った。
「おはよう、アスカちゃん」
 背後から、母がアスカに挨拶する。
「あ、おはようございます、おば様」
 ユイに気づいたアスカは、それまでシンジに向けていたむっつりした顔を破
顔させた。たいした猫かぶりだと思う。嫌みでなく尊敬してしまう。
「ごめんなさいねえ。シンジったら、おちん――」
 母が、何かとんでもないことを言おうとしていることを悟って、シンジは大
声でそれを遮った。
「わあぁぁぁぁっ!」
 事情の分からないアスカが、目を白黒させる。
「は、早く行こう。学校、遅刻しちゃうよ」
「え、ええ……ちょっ」
 シンジはアスカの腕を取って、玄関を飛び出した。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
 送り出してくれる母の声に、シンジは振り返らずに答えた。

646 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/10 16:48 ID:mfL/Y7ui
 家を出て、数十メートルほど進み、
「ちょ、ちょっと、いつまで掴んでんのよ!」
 アスカに言われて、シンジは掴みっ放しだったアスカの腕を放した。母とア
スカを引き離さなければいけないと慌てていたので、普段ならまずしない強引
なことをしてしまった。
「あ、ごめん」
 さらに罵倒されるかと覚悟するが、アスカは、ふん、と短く鼻を鳴らしただ
けでそれ以上なにも言ってこない。
「走るわよ」
 アスカが小走りでかけ始めたので、シンジもそれを追った。ふたり並んで走
る。
「で、どうなのよ」
 走りながらアスカ。
「どうって?」
「お母さんと、一緒に暮らすようになって」
 聞かれてシンジは、顔をすこしうつむかせた。補完計画は、ゼーレの計画、
ネルフの計画どちらとも違う結末を迎えた。その過程で魂だけの存在になっ
ていたユイのような存在は、肉体を取り戻した。
「……アスカは?」
 質問には答えずに、そう返す。
「私は――私は、嬉しいわよ。ママは私を見てくれるし」
 アスカは、どこか遠くを見つめるような眼差しで言う。笑顔ではあるが、彼
女の思いが単純に喜びだけでないのはシンジにも分かった。
「僕も、嬉しいよ。けど……」
 そこで途切れてしまった言葉を、アスカが引き受けてくれる。
「碇司令――あんたのお父さんは、いなくなっちゃったのよね」
「綾波もね……」
 それでふたりとも黙ってしまう。消えてしまった身近な者を、思い出として
語れるほど時は経っていない。
(それにさ)
 と、胸中でシンジは思う。ユイは――シンジの前から消えてしまった時その
ままの彼女は、中学生の母親としてあまりに若すぎるのだ。
683 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/11 04:39 ID:7QLeSrn7
 夕飯を食べていたシンジは、スパゲッティを巻き取っていたフォークの動き
を止めた。どうにも落ち着かない。
 というのも、向かいに座ったユイが両肘をついて、にこにこした顔でこちら
をずっと見つめているからだ。
「美味しい?」
「う、うん……美味しいよ」
 訊ねられて、シンジは正直に答えた。ミートソーススパゲッティもポテトサ
ラダも、派手さにこそ欠けるものの、味は間違いなく一級のものだ。
「そう、よかったわ」
 そう言って、ユイはますます笑みを深くする。その顔を見ていると、シンジ
まで朗らかな気持ちになってしまう。
(こういうのが幸せって言うのかな?)
 母の手料理を食べて、それが美味しくて、好物になって、さすがに毎日よう
にそれをねだるには、自分は成長し過ぎてしまったけれど。それは取り戻すこ
とのできない時――なのだろうか。
「アスカちゃんって、すごく可愛い娘ね」
「え?」

684 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/11 04:39 ID:7QLeSrn7
 脈絡なくアスカを話題に出され、シンジは首を捻った。確かにアスカの容姿
は、誰が見ても美しいと思うだろうが。
「もうキスしたのかしら?」
 飲み込み欠けていたスパゲッティが、あらぬところに入り込む。シンジは、
ごほごほとむせた。
「な、なに言うんだよ。そんなのあるわけないじゃないか……」
 シンジは、母の顔をなるべく見ないようにして嘘をついた。そんなことを母
親に言うのは照れくさいし、命日――実際こうして目の前にいるのだから変な
話しだが――に女の子とキスしていたというのも罪悪感がある。
「あら、誰もシンジとだなんて言ってないわよ」
 ユイはくすりと、声に出して笑う。どうやら鎌を掛けられたらしい。
 彼女は立ち上がり、シンジの側に歩み寄ってくる。
「だってシンジは、まだまだ子供じゃない。こんなに顔を汚して」
 言って、母の舌がシンジの口の脇に付いたミートソースを舐め取った。
「食べ終わったら、お風呂に入るのよ」
 返事をすることもできずに、シンジは台所へ向かうユイの背中を見送った。
なま暖かった舌の跡は、空気に触れてゆっくりと冷えていく。
691 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/11 16:06 ID:xYC60xLL
 湯船に浸かり、シンジはため息をついた。
「母さんたら……」
 ユイは、シンジのことを五歳か六歳の子供だと思っているに違いない。母に
とっては、そこで触れ合いが途切れてしまったのだから、またそこから始めて
いるつもりなのかもしれないが、その間にシンジは成長という変化をしてしまっ
ている。心も、そして体も変わってしまっていた。
 物思いにふけっていると、唐突に浴室の扉が開かれる。そちらに首を巡らせ
て、
「へ…? うわぁぁぁっ!」
 シンジは、今日何度目かの悲鳴を上げた。
「シンジ、一緒に入りましょ」
 ユイが、まったくの全裸で立っている。巨乳とまではいかないまでも、シン
ジの同年代の女子とは比べられない、女の成熟した乳房。股間の濃い茂り。肉
感的な太股。それらに一瞬見とれてしまってから、シンジは制止の言葉を叫ん
だ。
「だ、だめだよ!」
「どうして? 恥ずかしいの? 親子なんだから恥ずかしがることなんてない
のよ」
 諭すような言い方をして、ユイは浴室に足を踏み入れる。
 シンジはユイから視線を背けて、浴槽の水面だけを凝視した。
「ぼ、僕、もう中学生なんだよ」

692 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/11 16:06 ID:xYC60xLL
「でも、私の子供だってことには変わらないでしょ?」
 耳元で聞こえる声に、横目で見ると、母がしゃがんだ状態でこちらを覗き込
んでいる。至近距離にある胸に、どうして目がいってしまう。柔らかく弾力の
ありそうな乳房と、果実のような乳首。
(せ、せめてタオルで隠してよ……)
 目眩を覚える。耐えられそうにない。
「出てってよ……」
 また母から視線を逸らして、言う。
「え?」
「こっから、出てってよ」
 聞き返してくるユイに、視線は向けないまま繰り返す。
「あら、シンジは裸の母さんを追い出すつもり?」
 おどけた母の声。
「いいから出てってよ! 変だよ、母さん」
 シンジは怒鳴ってしまっていた――水面を見つめながら。
「シンジ……」
 驚いたようにユイがつぶやく。立ち上がり、扉の取っ手に手を掛けた。
「ごめんなさいね」
 寂しげな声を残して、母は浴室を出ていった。
 シンジは浴槽を――その中で勃起してしまっている性器をじっと見つめなが
ら、苦しげに息を吐いた。鼓動が高く、高くなっていく。
710 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/12 05:07 ID:lX0b0AGc
 シンジは、いらいらと寝返りを打った。ベットに入って、もう三十分も経った
だろうか、まるで寝付けない。
 目を閉じていると、浴室で目撃してしまったユイの裸体ばかりが浮かんでく
る。考えまい、考えまいとするのだが、そうすると余計に細部まではっきりと
思い描いてしまう。
(きれいだったな……母さん)
 色白で、染みなんか一つもなくて、それになんだろう見ているだけでドキド
キして――つまりは堪らなく魅力的だった。
 無意識に股間に手が伸びそうになるのを、シンジはすんでのところで止めた。
性器が勃起してしまうのは、しかたがない。生理現象なのだから。けれど、
(母さんをおかずにするなんて、最低じゃないかっ)
 それは絶対に許されない。その思いだけで、必死に堪える。
(そうだ。羊でも数えよう)
 羊を数えて気持ちよく眠れた記憶というのはどうにもないのだが、藁にも縋
る心境で数えてみる。
 五十を過ぎた頃、カチャ、と取っ手の下げられる音がした。きぃっと、ドア
がゆっくりと開かれる。
「シンジ、起きてる?」
 抑えた、ユイの声。

711 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/12 05:07 ID:lX0b0AGc
 シンジは目を閉じたまま、答えずに眠ったふりをする。浴室でのことで、ど
うにも気まずい。
 近づいてくる足音。数歩で止まる。
 見下ろされているのだろうか、間近に気配を感じる。シンジは、なるべく自
然に見えるように呼吸することに労力を注いだ。
 唐突に布団がめくられ、危うく身じろぎしてしまいそうになる。
 身動きできないでいると、ユイは布団の中に入ってくる。
(な、なんでぇ!?)
 混乱するシンジの体に、ユイの体が触れる。シングルベットだから当然だ。
 柔らかな匂いが鼻孔をくすぐった。心が落ち着いていく。
(これが、母さんの匂い……?)
 さわさわと頭が撫でられる。
 シンジは、なんだか涙が出そうになってしまった。懐かしい。
 母の記憶なんて、ほとんどない。けれど、脳じゃなくて、鼻や肌――体が記
憶していて、懐かしくて嬉しいと訴えている。
 シンジは、そっと薄目を開けて、
「なっ」
 目の前にある、ふくよかな胸に驚きの声を上げてしまっていた。ブラさえも
していない生の乳房が、たった数センチの空間を挟んである。

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