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14 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/28 05:04 ID:L/sJbcvP
 もう、どうでもいい。何もかも、全部、どうだっていい。
 一秒後に世界が滅んだとしても、私はきっと後悔しない。ううん、むしろそ
うなってしまえばいいのに。
 真っ暗な部屋の中、ベットの上で膝を抱えて座ってる。もうどれくらい、こ
うしているんだろ。忘れちゃったわ。
 床には、物がめちゃくちゃに散乱しているはずで、迂闊に下りられたもんじゃ
ない。
 物にあたることにも、大声で叫ぶことにも、とっくに疲れて、今はただ時が
肌を撫でていく不愉快な感触にじっと耐えてる。
 シンクロ率、ゼロ……エヴァに乗れない私。笑っちゃうくらい、何も残らな
い。
 選ばれた子供。私は、特別。だから、誇らしい気持ちでいられたのに。今ま
で胸を張って生きてこられたのに。
 それがなくなった私は――何も無い私は、こうして闇の中でうずくまること
しかできない。
 昨日まではお姫様。でも今は、ギロチン台の上≠サんな心境。
 でも、私の場合はもっと悪い。私には、生を断ち切ってくれるギロチンの刃
さえ無いんだから。
 と、部屋の扉が遠慮がちに叩かれた。誰かは分かっている。けれど私は、何
も答えなかった。
「……アスカ、起きてる?」
 予想通り、シンジの声。やっとこちらに聞こえるくらいの小さな声。私は、
やはり返事をしなかった。
「開けるよ……?」
 宣言してから、だいぶ間を置いて――開けていいのか、迷ったんでしょうね。
まったく意気地のない。鍵が付いてるわけじゃなし、さっさと開ければいいの
に――扉が開かれる。

15 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/28 05:05 ID:L/sJbcvP
 差し込んでくる光に、私は目を細めた。
「ご飯、作ったんだけど……」
 入り口に立つシンジの姿。手に持ったお盆に食事を載せている。
「いらない……」
 私は、ほとんど口を動かさずにつぶやいた。
「気に入らないなら作り直すよ。何が食べたいの……?」
 私の機嫌を伺うような言葉と、表情。なんなんだろう、こいつ? いつも、
いつも他人の目ばかり気にして。「せっかく作ったんだから、食べろ」くらい
言えないの。
「何も食べたくない……」
 食欲も、どこかに消えてしまったみたい。まるで湧かない。
「でも、何か食べないと……もう何日もまともに食べてないじゃないか……」
 こちらの様子を見ながら、途切れ途切れに言うシンジに苛ついて、私は叫ん
でいた。何日かぶりの大声だ。
「食べたくないって言ってるでしょ!」
 シンジは、体をびくりとさせたが、
「けど……」
 それでもなお食い下がってくる。その私を見る悲壮な表情から、自分がどれ
ほど酷い顔をしているか想像できた。
 シンジは私を見て――けれど目は合わせずに――反応を待っている。
 苛々する。こいつを見ていると、苛々する。
 持ってるくせに、私が必死に守ろうとしたもの、今でもちゃんと持ってるく
せに。抜群のシンクロ率。輝かしい戦歴。エヴァのエースパイロット。無敵の
シンジ様。
 だったら、持ってるんだったら、もっと堂々としてればいい。私を見下せば
いい。屈服させればいい。私が憧れてしまうくらいに、強く。
 なのに、なのに、こいつは――

22 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/28 16:41 ID:zYvA61q3
「僕が作った物が嫌なら、何か買ってくるけど……」
 そんな情けないことを言う。
「いいから、ほっといてよ!」
 私は腕に顔を押し付けた。このまま何も食べず、何も飲まず、何もせずに消
え去ってしまいたい。
 そろそろシンジも諦めるころだろうし。私が嫌がっているならしかたない、
とか言い訳して。
 けど、
「ほっとけないよ」
 シンジの小さいけれどはっきりした声が聞こえて、私は顔は上げた。へえ、
珍しく粘るじゃない。
「なんでよ?」
 私は苦笑して聞く。ほっとけない理由なんてありゃしないだろうに。
「なんでって……だって、僕たち、か、家族みたいなものじゃないか」
「家族? 馬鹿じゃないの。ただ一緒の家に住んでるってだけの他人じゃない。
何の繋がりもない、赤の他人じゃない」
 シンジの答えがあまりにもおかしくて、笑ってしまう。まさかシンジだって、
本気で思っていやしないでしょ。返答に困って、適当に口に出しただけに決ま
ってる。
「そうかもしれない……けど、他人でも僕はアスカのことが好きだから、心配
で」

23 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/28 16:41 ID:zYvA61q3
「何?」
 今こいつなんて言ったの?
「え……? だから、心配で――」
「そうじゃない! その前よ」
 私が問い詰めると、シンジは顔を真っ赤にして繰り返した。
「ア、アスカのこと好きだから……」
「嘘よ!」
 ベット下りて立ち上がる。運良く、何も足には刺さらない。
「あんた、恐いんでしょ? 他人が恐いんでしょ? でもその中で、私といる
のが一番傷つかないから、一番ましだから側にいたいって思うんでしょ? 都
合良く寂しさを忘れられるから」
 一歩、一歩、散乱した物を踏み分けながらシンジに近づく。身動きしないシ
ンジの前にたどり着いて、
「それが好き? そんなわけないじゃないっ!」
 腕を振るい持っているお盆を弾き飛ばす。派手な音を立てて食器が散乱する。
割れた物もあったかもしれない。
「ア、アスカ……あっ」
 シンジは、驚いて後ずさった。廊下に出て、足を滑らせて尻餅をつく。
 私は、倒れたシンジの上に、のし掛かった。
「だったら見せてみなさいよ。好きだって証拠。今すぐ」

31 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/05/29 06:05 ID:a1hdWBA3
 後悔させてやる。私のこと何も知りもしないで――今まで知ろうともしなかっ
たくせに、好きだなんて口から出任せ言ったこと、絶対後悔させてやるから。
「証拠って……どうしたら……」
「そんなの自分で考えなさいよ!」
 許しを請うような目を向けてくるシンジを、上から怒鳴りつけてやる。
 シンジは眉を八の字にして、何度も瞬きして、声とも息ともつかない音を口
から漏らす。どうしていいのかまるで分からず、困り果てた様子だ。
 本当に、どこまでも情けないやつ。
「分かんないの? 私のこと好きなんでしょ? だったら――」
 私は、頭突きをするみたいな速さで顔を降下させて、唇をシンジの唇に重ね
た。つまり、キスをした。
 安直な表現だと、我ながら思う。でもきっと、言葉以外で好意を表す方法は、
そんなに多くない。
 もちろん目なんか閉じてやらない。シンジも、びっくりして目を見開いてる。
 意地になって、ぎゅっと強く押し付ける。
 私はできるだけ長い間そうしていたつもりだったけれど、実際には数十秒程
度のことでしかなかったはず。
 唇を離すと、シンジは苦しげに大きく息を吐いた。私も幾分、鼓動が速まっ
ている。口づけをしたまま鼻で呼吸するのは、なんとなく躊躇われて、ほとん
ど息を止めてしまっていた。
「アスカ……」
「ほら、例を見せてあげたわよ。あんたも、やって見せなさいよ。好きだって
証拠。別のやり方で」

105 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/06/01 04:52 ID:RZ/7QQMK
 睨んでやる。強く、強く、瞳に力を込めて。
 シンジは、ゆっくりと身を起こす。上目遣いでこっちを見て、私の背後に手
を回す。
 抱きしめられた――わけじゃない。ただ背中に触れられているだけ。腫れ物
に触るみたいに、まるで力がこもっていない。向き合った体も、随分と離れて
いる。
 恐いんだ。こいつは人に触れることを、どうしようもなく恐れている。その
くせに好きだなんて――。
 怒りが湧いた。
「馬鹿にすんじゃないわよ!」
 激情に任せて、シンジを突き飛ばす。
「うわっ」
 シンジは廊下に背中を打ちつけて、顔を歪めた。
 立ち上がって、倒れているシンジの胸ぐらを掴んで起き上がらせる。そのま
ま――
「こっち、来なさいよ」
 シンジを部屋の中に引きずり込んで、ベッドの方に突き飛ばした。
 私は、タンクトップとスパッツ、それにブラとショーツ、次々に脱ぎ捨てる。
ふと見下ろした自分の体は、想像以上にやつれていて、苦笑してしまった。肋
骨が、はっきりと浮き出てしまっている。
「な、なにするの……?」
 ベッドに半身を乗せて、完全に怯えた様子でシンジが聞いてくる。
「決まってんでしょ。セックスよ」
「セ、セックスぅ」
 答えてやると、シンジは上擦った声で繰り返した。
「そうよ。これ以上分かりやすい証拠はないでしょ? 好きだったらできるわ
よね?」
 言いながら、自分の嘘に呆れてしまう。セックスが愛情の産物だなんて信じ
てるほど、私はイノセントじゃない。

192 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/06/05 05:37 ID:At12AiHq
「えっ、そ、それは……で、でも……」
「今更、がたがた言ってんじゃないわよ」
 狼狽えるシンジの上に覆い被さって、服を剥ぎ取る。
「や、やめてよ」
 今にも泣きそうなシンジの懇願はもちろん無視して、私と同じ裸にしてやる。
シンジの性器は、もう大きくなっていて――
「なによ。あんたも、すっかりその気なんじゃない」
 嘲笑ってやると、シンジは顔を真っ赤にした。私は内心で、ほっとする。今
の痩せこけた身体では――いや、以前のいくらかは自信のあった体型の時でさ
え、シンジにとって魅力が無いのではないかと怯えていたから。
 一緒に暮らすようになって、私は何度となくシンジを挑発した。けれどいつ
だって、こいつは誘いに乗ってはこなかった。そんなことをするのは、大抵一
人でいるのが堪らない時なのに――もちろん相手は誰だってよかった。たまた
ま、そこにシンジがいただけのこと――本当にこの世界で一人きりになってし
まったようで、苦しい思いをした。寂しさを見透かされているのではないかと
疑いさえした。
 けど違った。こいつ他人に触れられないだけ。許可を貰わなくちゃ、肩に手
を掛けることも、握手も、抱きしめることも、口づけも、身体を重ねることも、
何一つできない。ただ待ってるだけの臆病者。最低の卑怯者。

193 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/06/05 05:38 ID:At12AiHq
 身を寄せ合うことでしか生き物は、相手の温もりを感じることができない。
例えそれが、鋭い棘で互いにその身を傷つけ合う行為だとしたって。それを恐
れて後ずさりばかりしているやつが、人を好きになれるわけがない!
「本当は嫌いなんでしょ、私のこと?」
「えっ?」
 ぽつりと言うと、シンジは間の抜けた顔を見せた。すっとぼけてんじゃない
わよ。
「わがままで、高飛車で、生意気で、乱暴で、口汚くて、傲慢で、エリート面
してて、口だけで実力が伴って無くて、いけ好かないやつだって思ってんでしょ!?
エヴァに乗れなくなって、ざまあ見ろって、そう思ってんでしょ!?」
 一気にまくし立てる。自分の短所、無自覚じゃない。けど、直すつもりなん
か無い。だって、これが私だから。これまで生きてきた、私だから。
「言いなさいよ、ホントのこと。好きじゃないって、嫌いなんだって。そした
ら、やめてあげるわよ。こんなこと……」
 嫌いって、早く言って欲しい。そしたらきっと、楽になれる。だって、はっ
きり嫌われてるって分かれば、もう嫌われてるのかも? って、びくびくする
必要なくなるじゃない。

248 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/06/09 16:08 ID:XLiA1G2P
 私が、じっと見下ろす中でシンジは、
「嫌いなわけないじゃないか……好きだよ、ほんとに……」
 まだ欺瞞を続ける。
 私は、かっとなる。せっかく素直に認めるなら、許してやろうと思ったのに。
「そう……。だったら、行動で示して見せなさいよ!」
 私はシンジの顔に、股間を押し当てた。
「舐めなさいよ、私のまんこ! 好きだったらできるでしょ!?」
 息ができないくらいに強く、口元に押し当ててやる。
「うぅっ」
 シンジは苦しそうに呻いた。顔を動かして逃げようとするので、手で押さえ
つけてやる。
「臭いでしょ? 汚いでしょ? 三日もお風呂入ってないんだからさぁ」
 私は、汚れてしまっている。腐ってしまっている。それはもう、洗い流すこ
となんてできない。だから、お風呂にも入らない。意味がない。面倒なだけだ
から。どうだっていい。
 私は、汚れた性器を何度もシンジの顔に擦りつけた。

249 :微熱 ◆DIO.JVXsqE :03/06/09 16:08 ID:XLiA1G2P
「ほら、さっさと舐めなさいよ。犬みたいに、舌出してさ。好きなんでしょ、
私のこと?」
 そろそろシンジも、私の醜さを思い知っただろうか。悪臭と嫌悪で、涙を流
して許しを請うなら許してやろう。仕方のないことだから。そう思う。
 なのに――
「あっ」
 暖かな感触を性器に受けて、私は声を漏らしてしまった。
 見下ろすと、シンジが性器に舌を這わせている。子犬が皿のミルクを飲むみ
たいにチロチロとだけれど、上目使いで私を見て健気に舐めている。
「な、や――」
 やめさいよ、そう叫びそうになるのをぐっと堪える。動揺してしまっている
心を、なんとか落ち着かせようとする。
 こいつは、言われたことにただ従っているだけ。状況に流されているだけ。
私の汚れを受け入れてくれているわけじゃない。
 そう、こいつは――シンジは、ただ馬鹿なだけだ。
「なによ、そのしみったれた舐め方は? もっと強く舐めなさいよ。そんなん
じゃ、ちっとも気持ちよくなんてなれやしないわよ」

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